刑事事件の量刑の予測について
1 弁護人として刑事事件を扱っていて、被疑者や被告人の最大の関心事の一つに「どれくらいの刑となりそうか」ということがあります。
ただし、一貫して無罪を主張している場合は、そもそも有罪を想定していないでしょうから除きます。
2 プロとしては、量刑についてピンポイントでスパッと答えられれば良いのですが、なかなかそうもいきません。
例えば、 控訴事件(一審判決に不服があれば控訴ができます)の弁護人をやっていると、一審弁護人の量刑の予測が判決と違ったという不満を聞くことがあります。その被告人は、一審弁護人が言った量刑の予測を頼りに頑張ってきたというのです。
しかし、量刑は、ケースバイケースという他なく、最終的には裁判官の判断次第となります。
すなわち、弁護人が量刑を予測したとしても、それはあくまでその弁護人の予測にすぎず、予測が判決と異なってもいわば仕方のないことともいえるのです。
3 量刑の予測がとても難しいとはいえ、弁護人はプロとして当然に量刑の見通しは話さなければなりません。
ただ、先に述べたような理由で、その見通しはある程度の幅をもった予測にならざるを得ません。
そのような訳ですから、弁護人に量刑の見通しを聞いてみて、量刑をピンポイントで予測・断言するような場合は、眉に唾をして聞いた方が良いでしょう。
4 私が量刑について聞かれたときには、以下のように答えます。
「量刑は~から~までの間になると思います。貴方の言い分や貴方に有利な客観的な事実を裁判所に分かってもらえれば、自ずと適正な刑になるので、そうなるよう頑張っていきましょう。」
弁護人としては、量刑の予測よりもむしろ刑事手続を通して、やったことの責任だけはきちっと取ってもらうようにし、その上でこれからどのように更生し、その後の人生をどう生きていくかを一緒に考えていくことこそ重要であると思うのです。