少年事件について
1 面会を重ねるうちに、少年がみるみる良い方向に変化していく姿を見るにつけて、少年事件にとてもやり甲斐を感じます。他方で、制度自体に様々な違和感を覚えることがあります。
2 少年事件を、成人の刑事事件と較べたとき、その違和感は大きくなります。
世の中では少年の重大犯罪に対する厳罰化が叫ばれ、少年法もその方向に沿って改正され、また今後更に改正されるようです。
少年の重大犯罪に対する厳罰化もある程度は理解できます。しかし、成人であれば軽い犯罪といえる場合でも、少年が少年院送りになるなどして、それは重すぎるだろうと思うときが少なからずあります。
3 例えば、成人の場合、窃盗などの財産犯においては、被害者と示談が成立したり、嘆願書を書いてもらったりすると、「被害者が良いと言ってるんだから、良いだろう」という理屈で、情状面でかなりプラスに作用し、他の情状との関係もありますが、起訴されなかったり、執行猶予が付いたりして身柄拘束を解かれることも少なくありません。
ところが、少年の場合では、仮に示談書や嘆願書があっても、少年の反省が足りないなどとして、更生のために教育する必要があると判断されると、比較的簡単に少年院に入れられてしまいます。そして、少年事件は、成人でいうところの起訴猶予ということがとなく、原則として全ての事件が家庭裁判所に送致されます。しかも、身柄拘束されていた期間を少年院の入院期間に算入されることもないのです。
すなわち、成人であれば起訴猶予になったり執行猶予が付く事案でも、少年であるが故に少年院に行くことがあるのです。
4 以上に述べたことの根底には、少年は未熟でありそれ故に柔軟に更正できるという可塑性があるため、成人とは異なる扱いをするということや、少年院は刑務所と異なり、矯正の教育という目的をもった施設であるということがあります。
しかしながら、一方で少年の厳罰化すなわち教育というよりも処罰という観点から成人と同じような扱いにしようとし、他方で教育という名のもと成人に近付けるどころか成人よりも厳しい処分となることを容認するとすれば、少年事件をめぐる制度は矛盾を孕んだものとなるのであり、これは見過ごせない問題だと思います。
少年事件をめぐる制度全体に、かなりの制度疲労が現れている気がします。
なお、少年院の評価については様々あると思いますが、やはり一度貼られたレッテルは中々とれないという点で、少年の将来に暗い影を落とすことは間違いがないと思います。
5 これまでに述べた議論は立法論の要素が大きくなってしまいました。しかし、運用論としても、裁判所がそれらの事情を踏まえて、柔軟に運用していく必要があるのであり、付添人の弁護士も、裁判所が柔軟に判断するよう絶えず促していく必要があると思うのです。