弁護士 合田雄治郎

合田 雄治郎

私は、アスリート(スポーツ選手)を全面的にサポートするための法律事務所として、合田綜合法律事務所を設立いたしました。
アスリート特有の問題(スポーツ事故、スポンサー契約、対所属団体交渉、代表選考問題、ドーピング問題、体罰問題など)のみならず、日常生活に関わるトータルな問題(一般民事、刑事事件など)においてリーガルサービスを提供いたします。

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フリークライミング、スポーツクライミングの国内統括団体について

1 スポーツクライミング(英語表記はSport Climbing)が2020年東京五輪の追加競技となりましたこと、関係者の皆様には、心よりお祝い申し上げます。

今後、選手は五輪を目標に高いモチベーションをもってトレーニングを重ね、スポーツクライミング業界は益々発展することと思います。

この大きなニュースの少し前に、スポーツクライミングの国内統括団体(National Federation 、 NF)である公益社団法人日本山岳協会(以下、「日山協」)に対して、スポーツクライミングの国際統括団体(International Federation of Sport Climbing)から、団体名にスポーツクライミングの名称を入れるように要請されたとの報道がありました。
この報道の中で、日山協の役員25人にはスポーツクライミングの専門家は一人もおらず、団体名のみならず組織改革をも迫られているとされています。

この問題について、少し考えてみたいと思います。

2 スポーツクライミングはフリークライミングの中のひとつのカテゴリーです。
フリークライミングとは、できる限り道具を使わずに行うクライミングを指し、スポーツクライミングは、フリークライミングの中でも安全性がより確保されたクライミングを指します。
スポーツクライミングには、岩場での支点が強固であるなど安全性がある程度確保されたクライミングも含まれますが、主として室内の人工壁でのクライミングを指します。

そもそも人工壁は、岩場でのクライミングのトレーニング用の壁として生まれ、発展してきました。
人工壁は、公平・公正な環境を確保するという点で岩場よりも優れているため、現在では人工壁におけるコンペティションが盛んに行われています(過去には岩場でのコンペティションもありましたが今では殆ど姿を消しています)。

そして、クライマーは、人工壁でトレーニングをしたり、コンペティションに出場したりすることで、技術や能力を高め、その高めた技術や能力をもって岩場における高難度のクライミングを実践します。
また、岩場でのクライミングで得た経験や技術は、人工壁にフィードバックされて、より高度な技術や能力を習得することに寄与します。
このことは、人工壁において行われるコンペティションにおいて表彰台に立つようなクライマーは、殆どの場合、岩場でもトップクライマーであることにも表れています。

すなわち、フリークライミングにおける、岩場でのクライミングと人工壁でのクライミングは、相互に必要不可欠な存在であり、切っても切れない関係にあることがわかります。

3 ここで日本におけるフリークライミングを統括する団体をみてみましょう。

日山協がスポーツクライミングの統括団体である他に、NPO法人日本フリークライミング協会(以下、「JFA」)があります。

JFAは、現在、役員のほぼ全員がフリークライマーであり、従前は国内コンペティションの主催運営をしてきましたが、現在ではコンペティションから手を引き、岩場の整備や岩場利用を巡る折衝等に力を入れています。
JFAは、いわばフリークライミングのうち岩場でのクライミングについて統括しているといえます。
先日、盛んに報道された天然記念物にくさびが打たれたという件で、適切に対応したのはJFAです。

なお、JFAは、法人格を取得しているものの、組織的な位置付けとしては、日山協の加盟団体である公益社団法人東京都山岳連盟の一加盟団体に過ぎません。

4 日山協がスポーツクライミングすなわち人工壁でのクライミングを統括し、JFAが岩場でのクライミングを統括している状況は、フリークライミングの両輪であるはずの岩場でのクライミングと人工壁でのクライミングが分断されていることを意味します。

このような分断が生じた経緯についてはここでは述べませんが、少なくとも、フリークライマーにとって好ましい状況といえないことは確かです。

現状における、日山協とJFAとのいびつな関係は、フリークライマーの側にも大いに責任があると思いますが、日山協とJFAが、ひとつになることも含めて将来像を描き、お互いに協力し合い、岩場・人工壁でのフリークライミングの発展のために活動をすることを強く希望します。

フリークライマー・ファーストこそが、国内統括団体の存在意義といえるのではないでしょうか。

 

 

 

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