弁護士 合田雄治郎

合田 雄治郎

私は、アスリート(スポーツ選手)を全面的にサポートするための法律事務所として、合田綜合法律事務所を設立いたしました。
アスリート特有の問題(スポーツ事故、スポンサー契約、対所属団体交渉、代表選考問題、ドーピング問題、体罰問題など)のみならず、日常生活に関わるトータルな問題(一般民事、刑事事件など)においてリーガルサービスを提供いたします。

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民事法上の違法と刑事法上の違法

1 日大アメフト事件に関して、数社の報道機関から取材を受けました。取材の主題は、タックルをした日大選手に、刑事責任あるいは民事責任が生じるか、というものでした。

記者の方の取材に応じる中で、「違法の相対性」や「法秩序の統一性」について、説明する必要性を痛感しました。

 

2 ある行為に関して、民事法上の責任と刑事法上の責任とが各別の手続きにより問われ、結果的に、民事法上の責任の有無と刑事法上の責任の有無とが一致しない場合があります。

このような相違は、民事法における違法の評価と刑事法における違法の評価との不一致が原因のひとつとなっていることがあります。

では、そもそも、このような違法の評価の不一致が許されるのでしょうか。

 

3 法秩序は可及的に統一的であるべきことを理由として、民事法における違法の評価と刑事法における違法の評価とは一致すべきであるべきだという主張があります。

しかし、民事法における要件・効果と刑事法における要件・効果が異なること、刑事法の補充性・謙抑性として刑罰は最後の手段として補充的に用いられるべきであることからして、違法の評価はできるだけ統一的であることが望ましいものの、民事法で違法と評価されても、刑事法では違法と評価されないこともあり得ると考えるべきです。

なお、民事法上は適法であっても、刑事法上は違法であることを認める立場もありますが、刑法の補充性、謙抑性から、少数説に止まっています。

 

4 以上に述べたことを、日大アメフト事件に関連して検討をしてみます。

実際には、日大選手は、クォーターバックに怪我をさせようとして(本人の記者会見でそのように述べています)反則行為であるタックルに及んでいるため、民事法上も刑事法上も違法であると評価され、責任を負う可能性が高いといえます。

これに対して例えば、日大選手が、クォーターバックがパスをした直後に怪我をさせる意図(故意)がなくタックルをして怪我をさせてしまった場合で、日大選手はタックルをすることを避けようと思えば避けられたケースでは、どうでしょうか。

このケースについて民事法上の責任を考えると、日大選手はパスをした直後とはいえ、ボールを持っていないクォーターバックにタックルしており、その上タックルを避けようと思えば避けられるケースであるため、違法と評価されて(違法性は阻却されず)、過失も認められ、責任を負う可能性があります。これに対して、刑事法上は、先ほど述べた刑事法の補充性、謙抑性の観点から、違法と評価されず、責任を負わない可能が高いと思われます。

このように、民事法上は違法と評価されても刑事法上は違法と評価されない場面が出てきます。

 

5 市民生活を送る上で、違法と評価される行為は、民事法上も刑事法上も統一的であることは分かりやすいですし、望ましいといえます。

しかし、民事においては殆どの場合に最終的に金銭の支払により解決されるのに対し、刑事においては懲役・禁錮(場合によっては死刑).などの重大な刑罰を科せられることを考えれば、この違法の評価の相対性はやむを得ないものといえるのではないでしょうか。

 

 

 

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