弁護士 合田雄治郎

合田 雄治郎

私は、アスリート(スポーツ選手)を全面的にサポートするための法律事務所として、合田綜合法律事務所を設立いたしました。
アスリート特有の問題(スポーツ事故、スポンサー契約、対所属団体交渉、代表選考問題、ドーピング問題、体罰問題など)のみならず、日常生活に関わるトータルな問題(一般民事、刑事事件など)においてリーガルサービスを提供いたします。

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代表選考について(5)

1 12月5日にJSAA(日本スポーツ仲裁機構)主催の「代表選手選考紛争をめぐる問題」と題するシンポジウムがありました。

代表選考の問題については、小欄で4回にわたって考えました(下記参照)。今回のJSAAのシンポに参加して気付いたことがありましたので、以前の考察に加えて、述べたいと思います。

2 先ず、日本水泳連盟(以下「水連」)の競泳に関する報告によれば、明確で客観的な代表選考基準を予め開示すること(基準の客観化・基準の開示)で、選手の競技能力が上がったということです。

2000年に代表選考をめぐり紛争になった千葉すずさんの問題以降、それまでの曖昧な基準を明確にして一発勝負で代表を決することにしたところ、実績のない選手はやる気を出し、ベテラン選手は危機感をもち、その結果、その後のオリンピックのメダルの数が大幅に増えたというものでした。

小欄でもアスリートを第一に考えるというアスリート・ファーストの視点から、基準の客観化・基準の開示は当然のこととして述べましたが、これはアスリートの権利保護という、ある意味で消極的な意味合いの強いものでした。しかし、この報告によって、アスリートの競技能力が向上するという、より積極的な意義が実証されたといえます。

ただし、競泳においてはタイムという客観的ものさしで明確な基準を示しうるということ、競泳が個人競技であるということに注意しなければなりません。基準の明確化・基準の開示がより積極的な意味合いを持つかは、団体競技の水球、採点競技のシンクロナイズドスイミング(団体種目もあります)や飛込みといった水連が統括する他の競技においては未だ証明されていないとのことでした。

今後の報告を待ちたいと思います。

3 もう一つは、既に報道もなされていますが、世界選手権の代表選考会議をマスコミに公開したという全日本柔道連盟(以下「全柔連」)の報告です。

以前小欄で、代表選考においては、NF(国内統括団体)の裁量を完全になくしてしまうことは現実的ではないが、裁量の幅をできるだけ狭くすべきであり、裁量権を行使した場合には、その公正性を確保するため事後的に説明する(あるいはアスリートの側から説明を求める)ようにしてはどうかとの提案をしました。

ところが、全柔連の選考過程の公開は、公正性の確保の点で、小欄の提案を上回る画期的な試みであるといえます。すなわち、NF自ら選考過程を公開することで裁量権の行使の様子がガラス張りになり、選考者はリアルタイムで慎重に裁量権を行使しなければならなくなり、NFに事後に説明責任を課すよりも公正性が担保されるものといえます。

全柔連の報告者の山下泰裕さんによれば、全柔連が選考過程を公開するに至るまで様々の反対がありご苦労もあったそうですが、公開後にはさして混乱が生じなかったとのことです。

このように、選考過程の公開は、リアルタイムで裁量権の行使の過程をガラス張りにし、裁量権の行使を慎重にさせる最良の方法のひとつとして、他の競技、特に裁量の幅が広い競技においては積極的に導入すべきものだと考えます。

 

【参考】

 代表選考について(1)https://gohda-law.com/blog/?p=266

 代表選考について(2)https://gohda-law.com/blog/?p=286

 代表選考について(3)https://gohda-law.com/blog/?p=293

 代表選考について(4)https://gohda-law.com/blog/?p=305

 

 

 

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